「タニカワ先生、あの説明はとても勉強になりましたよ、ありがとうございます!」── 先日、メンタルヘルス対策の社内ライケアでの研修で、ケーススタデイをしたことへの嬉しいお言葉です。昨今、巷を賑わせている「新人社員の新型うつ」についての第1次予防としての見解を述べたのですが、人事部署の複数の担当者から「大事な視点」として感謝いただきました。
よく、メンタルヘルス対策として労働時間を減らし、責任を減らすことを盛んに報じられていた時期がありました。これまでのメンタルヘルス対策は、弱者救済的、福利厚生的な意味合いの強い話題性をつくったニュースになっていたりしました。これはこれで、コンプライアンスとか社会的責任としての形式的なメンタルヘルス対策では間違いありません。でもそれでは、メンタルヘルス対策は、企業にとっては単なるコストであり実質的な成果を上げることは全く望めません。
でもどうせやるなら本当に意味のあるメンタルヘルス対策を進めていきたいですよね。「メンタルヘルス対策でそんな費用を投じることができるのなら、それをさっさとやっている」と声が聞こえてきそうです。話はそれますが、先輩社員が時間をかけて説明しても、新人が理解できないために困ったことはありませんか?あなたの周りに、仕事ができなさそうに見える上司・同僚・部下はいませんか?そのような人たちに対して、あなたは腹を立てているかもしれません。でも彼らをきちんと理解できているでしょうか?実はそんな『腹をたててる社員』の適切なメンタルヘルスケアこそ、会社の生産性を向上させる存在なのです。
つまり本当に意味のあるメンタルヘルス対策を実施するには、新人社員の健康教育に時間をかけることが必須です。そして新入社員の能力を発揮させるためには、新人の心身の健康が良好に管理できていることが最も重要です。それは欠勤や遅刻をしないで出勤できているという社会人としての最低必要条件ではありません。仕事にたいするモチベーションが高く、生き生きと業務を遂行できるという企業価値を生み出す要素を意識したメンタルヘルス対策をする必要があります。
働くとは、時間×生産性×健康管理
会社で働くには、時間が重要です。時間をかけすぎると過重労働となり社員の能力を伸ばすことはおろか、精神的にいっぱいいっぱいになり生産性は下がり、メンタルに不調をきたしてきます。心の不健康はやがて身体の不調に及びます。つまり時間と生産性と心身の健康には強い相関関係があるのです。経営とはメンタルヘルス対策の重要なポイントとなるのです。次に、ある新人女性社員のケーススタデイをご紹介します。実際の事例に基づいていますが、個人情報保護のためミニストーリーとして構成しています。
新入社員として、飲食サービス会社に入社してきたNさん。明るい性格で、今時の前向きな女性でしたが挨拶はしっかりしたものでした。「明るい子が入って良かった。雰囲気も明るくなりそうだよな」などと、Nさんの配属部署ではない部署からも噂が立つほどでした。ところで、この会社では、新入社員にはそれぞれ先輩が1人「メンター」としてついて、会社のことや仕事のことなどを教える制度になっており、Nさんの担当メンターに指名されたのがBさん(男性)です。
仕事ができない大卒新入社員ができない本当の理由
課長は、課内の先輩女性社員のメンター2名体制で新人女性社員のNさんを教えるように指示しました。先輩社員2人は、ゆっくり丁寧に教え、説明のフォローももちろん行います。至れり尽くせりのお嬢様扱いで臨んでいる待望の新人社員のOJT研修です。それなのに新人のNさんは、時間をかけて説明しても、眠そうにあくびをしています。先輩社員たちは、自分たちの説明が理解できたかどうか、新人Nさんにそのつど確認すると「わかりません」と答えるばかりです。業務が終わり「問題の新入社員」が帰ると、課長への報告の場では先輩社員たちは、たまらずキレてしまいました。
先輩社員「あの新人、本当にやる気あるんですか?」
課長「まあまあ。新人なんだから、もうちょっと暖かい目で見てやりなよ」
今後が心配になりますね。それからも新人社員のトンデモ社員は、普段は明るく朗らかなのに、仕事になるとさっぱりで配属2ヵ月以上経っても仕事を全く覚えていません。
課長「社会人なんだから、責任を持って仕事をしないか」
新人Nさん「わかりました!」と返事だけはいいのですが・・・
「いい子なのに、なぜ仕事で、こんなにできないのか」課内全員が頭を抱え、誰も新人の指導ができなくなってしまったのでした。
不適切なメンタルヘルス対策の問題点
現場での教育の限界を察知した管理部長からけんこう総研に連絡がきました。そこから私のカウンセリング訪問が始まったわけです。私はNさんと同じ年代の学生さんと医療専門学校で日々交流がありますので、Nさんのような方とのコミュニケーションは得意です。Nさんは、頑張りたいという意思は持っているのです。
Nさんと対話してが気づいたことは、ライン世代に多いコミュニケーションが取れないのが理由でした。絵スタンプでのコミュニケーション世代は、自分の気持ちや思いを言葉で意思表示をするのが不得意です。授業中に私が質問をすると、「意味わかんない」と返答してくる生徒さんがいらっしゃいます。私をバカにしていっているのではも、日本語がわからないために言っているのでもありません。彼らの頭の中は、内容がわからないのではなく、どういう解釈をすればわからない=意味が分かんないとなるのです。
新型うつは、ライン世代のSNSが及ぼす影響で発症する
しかしそれではNさんも同様、仕事でのコミュニケーションは成り立ちません。Nさんは、先輩から言われた言葉の「本当の意味」を理解していませんでした。例えば、「責任」という単語の意味は知っていても、仕事の中で「責任」をどう捉えなければいけないのかがわかっていなかったのです。また、「仕事」は一人でできるようにならなければいけないものだ、という意識も全くありませんでした。そんな状況で周りに叱られたり呆れられたりするうちに、彼女は心を閉ざすようになり、先輩や上司に聞くこともしないままになってしまったのです。これが新型うつの起因材料になります。管理部長さんの私への要請をしたとっさの判断に胸をなでおろしました
私はNさんが先ず何ができるようになればいいのかをリスト化させました。そのリストを元にNさんが理解できる言葉を選び、わかりやすく短いセンテンスで話をしました。こうしたことで共感と信頼が生まれNさんに心のゆとりができ、新型うつにはならずに見事に実践できる社員になれたのです。こうして新人社員は、空回りしていた「やる気」がきちんと発揮できるようになり、仕事も一つずつ課題をクリアし、職場の人間関係も持ち前の明るさで再構築することができたのです。
今では、先輩社員アドバイスにもしっかりと耳を傾け、デキる社員になったとのことです。もともと明るく快活で人付き合いが得意だったため、店舗とのやり取りも上手で、管理部になくてはならない人財になってきたです。
今回の事例のようにやる気はあっても殻を閉ざし、自分の考え方だけになってしまう社員は、4月、5月に新型うつになるリスク大です。メンタルヘルス対策ラインケアでは、新人社員の入社式時の希望にあふれるやる気を上手く引き出してあげてください。新人社員の目線できちんと向き合い、率先力として生産性アップの社員になれるはずです。
貴殿の職場にいらっしゃる『トンデモ新人社員』だって、適切なメンタルヘルス対策で活躍できる人財に生まれ変われます!
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